Kimoto Hidekazu/Lacquer craftsman 木元秀一/漆職人
Interview location➡Kamo river /Kyoto prefecture,Japan 鴨川、京都、日本
Interviewer➡Rikiya(以下R)
Coffee➡made in Tainan,Taiwan 台湾,台南産コーヒー
木元さん:こんちは!。今日は一緒にコーヒー飲めるように改造自転車にいろんな道具つんでもってきたぞ!俺は、ウィスキーものむよ。チョコレートも、もってきた。
R:おお、自転車おもしろい。ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。
木元さん:はい。よろしく。乾杯!
R:木元さん、漆と麻を混ぜて、硬化させて様々なものを作ってるんですよね?
木元さん:うん、ここ20年くらい、技術の開発をやってるね。展示会などで出会った人に営業を20年くらいかけつづけてるね。
R:具体的に営業はどうするんですか?
木元さん:誰かに会うときに、たくさんお面をもっていくんだよ笑。みんな、そこには研究者がいて、いろんな理論の話をしてるときに、いかつい漆と麻でできたお面を目の前に差し出すの笑。これつくったよって。
R:ぎょっとしますね笑
木元さん:京都の麻の事業者や、大学教授など研究者の集まるシンポジウムにいらっしゃってた、オランダの会社のHempflax社(http://hempflax.com/en )の社長さんDronkersさんにも同じことをして営業したのよ。その場でまわりの英語のはなせる大学の先生や、研究者をまきこんで、じぶんがつくった!どうだいっ!てプレゼンしたの笑。
そしたら、たまたま、彼が博物館をもってて、展示しないか、と興味をもってくれたのがはじまりだね。
R:そうでしたね。
そこから、ドイツにいた僕に連絡もきて。いろいろと交渉していって、お面等、作品も数点を、納品し、他にもHempflax社が、日本古来の工芸品や鎧などをあつめて、今回オランダ、アムステルダムのHemp museumヘンプミュージアム(http://hashmuseum.com)で、New collection/Hemp in Japan: the Samurai(http://hashmuseum.com/en/collection/hemp-in-japan-the-samurai)がはじまることになりました。おめでとうございます。
R:そもそもなぜ、漆など日本の素材の研究を始めたのですか?
木元さん:もともと祖父が茶室を作る仕事をしてて、祖父のライバルの建築家が、祖父の手柄を横取りしたのよ。
木元さん:それで、そのライバルの建築家に復讐してやろうと思って、徹底的に調べたの。
R:ほう。
木元さん:その建築家が、建築以外に、漆をなぜか研究してたことを、経歴調べてて、知ったんだよ。で、今茶室の技術を高めたところで、食ってく需要もないし、漆のほうを、真似をし始めたの。
R:へえ。
木元さん:あとは、20代の時、交通事故で足を骨折して、1年の入院が必要で、当時勤めてた建設会社をやめることになって。ああ、会社ってものは儚いんだな、好きなこと自分でやらないと、と思ったのもきっかけかな。
木元さん:そこから漆の研究が楽しくなって、はまった笑。
漆+様々な素材、の組み合わせで研究してるうちに茶器などの金継ぎもできるようになった(「金継ぎ」というのは、漆を使って壊れた器を修理する日本古来からの伝統技法)。
そして、あるとき日本古来の素材の麻をためしてみて、いろんな技法を開発してるうちにきれいに、効果的に、硬化させる方法を研究していったの。
漆を、あらゆるものに試してたから、この帽子も漆を塗って硬くして、つやを出してるし、洋服にも漆をぬってみて、硬化させてるよ。
R:まじですか笑(帽子をさわる・・・) おお!かたい!
木元さん:そうだろう!笑 はっはっは。ゲタもはいてるし。服もパリッとしてるし。だから、おれは背筋が伸びてる!
R:かっこいいし、しぶいですね。ちなみに今回、プロジェクトの1年間の間でトラブルはありましたか?
木元さん:うーんいろいろあったけど、空港で、お面を没収されたのは悔しいなあ。ドイツへ向かうときに、日本で。あいつら狙ってたんだよ絶対。
展示用ではなくて、念のため、もってこうとしたお面を、ひとつだけ自分のカバンにいれて日本からドイツ行きの飛行機に乗ろうとした。そしたら検査所のスタッフが「これはなんなんですか?」ときくんだよ。
おれが、「お面だよ」と答えたら,あきらかにこちらを不審そうに見やがって。おれが「ただのお面だ!お面の何が悪いんだ!かぶりたいのか!」と言い争ってたら、お面のキバ、歯の部分が危険、という不合理な理由で、そこでひとつ没収されちゃった。。
あれ、お面ほしかったんだよ、絶対。
R:そうかもしれませんね。(笑)
木元さん:そもそも、りきや君と出会ったのもなかなか風情があったね笑。わしの友人が、鴨川で、外で、ときどきお茶会をひとりで開いている。そこに、通りがかった人は、数百円で、お茶をたててもらって、お菓子も、もらえる。そして会話を、楽しむ。鴨川茶会。
その茶会のすぐ横で、鴨川でいろんな国の人と泳ごうとしてた日本人がりきや君だね。
R:一緒にいた友人の祖国、ラトビアでは、頭に花や草でできたわっかの冠を作って祝う日だったらしく、みんなで京都の鴨川でわっかの冠、つくってごはんたべて酒飲んで。そのとき、あ、Tea ceremonyだ、てなって。そこにいたフランス人の友人がお茶、飲みたい、っていったんで。ぼくが木元さんたちに、「お茶飲みたいです」って話しかけて。
木元さん:うん、そのあと、りきや君たち、パンツで鴨川にとびこんで泳いでたよね。
R:はい。暑かったので。
木元さん:ふむ。わしは、あのとき、なにかあれば、ああこいつ一緒になにかをしたい思ったんだよ。笑
R:あ、そうなんですね。でも僕も木元さん面白いと思いましたよ。真っ赤な着物のような服着てましたよね。そしてゲタ。
木元さん:そう!あれは怒りの赤だよ!あの服、実験で漆をぬってかたくしてきてたら、だんだん体がかぶれるようになってしまって。。。何事も忍耐だね。笑
R:木元さんは、そもそも漠然とヨーロッパを目指してたんですか?
木元さん:日本の麻とか漆業界は、歴史が長い。その代わりにルールがたくさんあって、外部から人がはいりにくい。とっつきにくいんだよ。
わしなんか、100年くらい続いてる老舗の企業たちからしたらひよっこだから一生懸命に研究しても名がないと、連絡したり会いに行っても無視されたりして。既存の業界は時間がたつとかたくなっていくんだよ。
R:なるほど。
木元さん:ただ、一つだけ確かなことがあった。最初は人を憎んではじめた漆と麻の研究も、そればっかりやってると好きになってきて、自分が情熱があることは、自分で確信してたから。漆と麻は縄文時代からの付き合いの有る素材同士だから。漆と麻の関係で新たな時代を今の世界にいるおれは担当して、次の世代にまたつなごうとしてる、という信念は自分にあるのを確信してたから。
で、よし!どうするんだ!?新しい素材や、研究、新しい人たちに会うには、ほかの国だ!みたいな。で、そのために自分が会いに行って営業できる人には、あらゆる手を尽くして営業しまくって。りきや君ドイツにいたから連絡して。
R:そうですね。
木元さん:うん、あとは、昔、亡くなった大切な友人がいて。
R:はい。
木元さん:その女性は、若くして病気で、亡くなったんだけど、おれのことを本当にしたってくれていて。
その子が亡くなる少し前に、おれに言ったんだよ。「あなたは、変で、素敵だから。いつの日か、ヨーロッパ、ドイツとオランダの国境あたりにいくわよ、そんなきがする!だから、国境に行って、私をおもいだしてね。」って。自分がいなくなるのをしってて、おれにいってくれたんだな。
R:そうなんですね。
木元さん:うん、本当に素晴らしい人だった。
そこから、なんでかしらないけど、おれはいつかヨーロッパにいくことになるな、と。
R:実際,オランダからドイツに向かう途中で、国境の駅でおりましたね。
木元さん:うん。時間があったから、ドイツとオランダの国境の近くにある田舎の駅でおりた。その亡くなった彼女のこと思い出して。
ただ、降りてみるとただの駅でなーんにもないんだ笑。なーんにもないただの田舎の駅。だから、その人との言葉、があったからこそ、おれは20年以上頑張れたんだなあと思った。たぶんあの子との、言葉のやり取りを信じたんだと思う。
R:そうなんですね。
木元さん:ああ、せつないなあ!りきや君!ウィスキーのむか?
R:笑。最近は日本でどうされてるんですか?次の目標はありますか?
木元さん:いまは、おいっ子と遊ぶのが好きだなあ。おいっ子はハワイに住んでたんだけど、そこからかえってきて、最近、俺が紹介した、パン屋さんで仕事とかはじめちゃって。(にこにこ笑う)
R:ご家族を大切にされてるんですね。
木元さん:ははは!そうかなあ!?(にこにこ笑う)
あとは、Hempflax社のDronkersさんの息子さんのアランさんとやりとりしてるから、お互いに、麻や素材を送りあって、加工して。これを続けて何か研究開発したい。あとは、東南アジアでもなんかやりたい。
あとは、茶室を建てたい!これみてみて。(かばんから、たくさんの古い設計図の束を取り出す)
家を整理してたら茶室の立体図面が複数出て来たのだけども、ヨーロッパで新しい素材を使って、茶室を作って見たら如何だろうかと考えている。茶室の立体図面は貴重な資料だから、面白い企画になると思うんだけどなあ。
R:おお!すごい「~尺」とか細かく書いてある!ちなみに、お金などに対する欲望はありますか?
木元さん:りきや君。金を稼いでも、満足は決して無い。自分が満足するには、どうすれば良いのかを考えて、今後の展開に活かしたいし、活かして欲しいと思っている。心が求める物はなんだ?自分なりの本当に信じれるものはなんだ?
自分なりの信念が無いと次には進めなくなるぞ。時間がたてば、たつほど、上に行けば、行くほど、道は狭くなって来る。
どの立場でも言える事だ。自分が満足する事は大切な事だ。欲と言うのは欠落しているから谷にはまる。自分の谷や欠落している部分を考えて,次の行動に活かして欲しい。欲の外で、物事は動くんだよ。
R:なるほど、勉強になります、ありがとうございます。
そろそろ暗くなってきたし帰りましょうか。今日はありがとうございました。また飲みにつれて行ってもらえればうれしいです。よろしくお願いします。
木元さん:おう!ありがとう!また飲みに行こうな!あ、今月末,知り合いの方と、BBQやるからどう?これる?